天罰! 9.11テロ

ccg2008-09-11

ノアの箱舟」に始まる、理不尽ともいえる天罰は、だいたい快楽に耽った民衆がそのターゲットとなりました。天から火が降ってきたという、ソドムとゴモラの物語は、本当かどうかは別として、性の乱れ、特に男色に対しての天罰だといいます。 ただ、「バベルの塔」の崩壊は、ちょっと違って、「人間が、神の領域である天まで届くような塔を建てようとした」、というのが理由で、すこし様相が違ってきます。神への「畏怖」を忘れたことへの天罰というのであれば、これは人間の思い上がりが罪だということで、「9.11」テロの悲劇にも似てきます。


近代化の進行は、徐々に「神」を後退させることで可能になりました。「神」が居てくれなくても、人間だけでうまくやってゆくためのシステム、それが「モダニズム」です。ロマンスを排除して、全てを即物的に、合理的に社会を創れば、なんの矛盾も起らないはずで、それが自然の摂理だ、と言う考え方です。
 例えば、貿易センタービルを、そのモダニズムの象徴ということも可能です。 世界中を唖然とさせた、絵に描いたようにみごとな崩壊の姿は、まさにそのモダニズム理論にしたがって立てられたから可能になりました。 最小限の材料と合理的な構造を実現するため、強度に偏りが無く、どこにも均等な力が掛かるように計算されたため、当然、計算上不必要な強度は不要となり、各フロアも、そのフロアに掛かる重量だけ支えられればよく、複数のフロア分の重量を支える強度などは、考慮する必要はないと考えられたのです。
 つまり、あの見事な崩壊と被害は、ヴィン・ラディンの仕業というよりは、モダニズム思想によることの方が大きいのです。そしてそれは、宗教的立場からみれば、「人知」に対しての過剰な自信が引き起こした必然的な「天罰」なのだということも可能なのです。【M】


ところで、9.11テロより遥か以前に、この貿易センタービルの崩壊を予測した人がいました。再々掲載になりますが、ラインホールド・ニーバーという宗教学者の一文を紹介します。

─「賢明であるとか、力があり、自分は正しいと考えているような人々の行為は、特別に断罪におちいるのであろう。バベルの塔を建てた人々は、天まで達するような塔を建てようとしたがゆえに、それは否定され、散りぢりばらばらになった。 都市における 「摩天楼」 にその代表的なシンボルを見出す今日の技術文明が直面するかもしれない破壊的な予測は、現代におけるバベルの塔の、ひとつの事例と考えることができるかもしれない」─ラインホールド・ニーバー 『アメリカ史のアイロニー』 (聖学院大学出版会)