恐怖の「地中美術館」

ccg2008-07-03

「なにか変だぞ」という感覚がずっと抜けなかった。香川県直島を社員旅行で訪れた時のことだ。ここには安藤忠雄設計による、有名な地中美術館はじめ、ベネッセミュージアム、町中に散在する、現代美術のための「家プロジェクト」などがある。さながら現代美術の島という印象だ。
 ただ、変なのは、観光客以外に、人の気配が感じられないのだ。漁港に面した町並みは、活気などというものは全くない。どの家も奇麗にリメイクされ、掃除も行き届いているのだが、そこになければならないはずの、人や、生活感や、匂いといったものが全くと言っていいほど消されている。

美術館全体が、地中に造られていることで有名になった「地中美術館」は、その存在が異様なだけではない、美術館運営方針も異様なものだ。美術館に入る前、みんな別室に入れられて、不気味な白装束のスタッフからさまざまな注意を受ける。たとえばカメラはそこから先には持ち込めないので、記念写真は撮れない。触ってはいけないのは作品だけでなく、ギャラリーの白い壁にも触ってはだめ、一緒に入館した人は、作品をよく見ようと、顔を近づけ過ぎたといって、注意されていた。ほんとの話だ。

「家プロジェクト」は民家を改装してその中に現代美術作品を展示しているのだが、作品はともかく、そのスタッフもどこかおかしい。よく見かけるボランティアの人達とは何かが違う。うまく云えないが、なぜか、堅苦しさがあり義務でやっているような印象さえ受ける。作品も、おとなしく「家」のなかに収まり、こぎれいなものばかりだ。唯一異彩を放っていたのが、作品が「家」の外まで露出していた、大竹伸朗のプロジェクトだ。というか、この島全体の中で、この作品だけが浮いていたと言ってもいい。つまり、島全てが小奇麗に作り替えられているのだ。
 
知っている人は、ベネッセ、と聞いただけで、ピンとくるかもしれない。あるいは多くの人が知っているかもしれない、つまりここは、創価学会によって作り替えられた島なのだ。【M】

写真は大竹伸朗のプロジェクト