「東京ミッドタウン」

 左の写真は、トニー・クラッグというイギリスの彫刻家のモニュメント。この大きな施設のなかで、最も美しい「部分」だ。 このモニュメントに象徴されるように、「東京ミッドタウン」は掴みどころのない空間というのが、最大の特徴だ。 例えば、真ん中の写真のように、一瞬、シュールな美しい「部分」を見せたりするのだが、すぐ先に目を転じると、なぜかミニマルな大壁面が現れる。
 また、この建築全体のコンセプトとなっている、「和」をイメージした、オーカー色の線材(建物の外装全体に使われている)も、建造物の規模に比べて材が細すぎるため、全体のコンセプトにも成り得ておらず、近くで観た場合のみに通用する、「ディスプレイ」 程度にしかなっていない。
右の写真の、日本庭園と洋風広場を併せもった後庭は、日が当たれば気持ちのいい空間だが、冬場はミッドタウンの主要建造物の大きな陰に入ってしまう。 庭園を六本木の喧噪から遮断したかったのだと思うが、景観の公共性を考えても、後庭ではなく、前庭にするべきではなかったか。   
 六本木ヒルズに隠れるように作られた庭園もそうだが、六本木の喧噪から背を向けた印象があり、少なくとも「開かれたオアシス」 というイメージではなく、階級を意識した構成であると、批判されてもしかたがないのではないかと思う。【M】