ビジュアルで診る「都知事選」


対抗馬、浅野史郎は、すでにポスターで負けている。誰のデザイン、というかだれのアイデアか知らないが、あのこむつかしい顔をした白黒写真は、ノー天気に明るく笑う現職都知事のポスターの真下に貼られるというくじ運の悪さも手伝ってか、ほとんどシンタローの陰に隠れてしまったようで、行動力が売りのはずの浅野史郎のイメージがぜんぜん伝わらない。しかも名前の赤いロゴは、ちょっとまえの冴えない共産党のポスターのようではないか。たぶん肉体派の現職のイメージに対抗するつもりで「知的」なイメージを作ろうとしたのだろうが、あのへたくそな写真は、ただのイジけたオヤジにしか見えないぞ。


 ここでは、直接的な政治のことにあまり触れたくないのですが、「嫌・保守」の私としては、何とか選挙イヤーの今年こそ野党に頑張ってもらいたいので、一言いわせてください。
 民主党は、夏の参議院議員選に勝ちたいのであれば、今回の都知事選では、はっきりと「浅野史郎公認」の立場を表明するべきだった。シンゾー内閣がよれよれのこの時期、小沢代表をはじめ、党幹部全員が街頭に繰り出して、無党派層を民主支持に変えさせる意気込みを見せなければ、浅野史郎が奇跡的に石原都知事に勝ったとしても、自民に変わって、民主党無党派層から支持を勝ち取ったことにはならない。野党は今、「政党色を隠す」といったような、策を弄する時ではないのだ。自民党と一緒になって首を引っ込めてしまってどうするんだ! そのまんま東」現象をまさにそのまんま受け取って、政党みずから政党を否定してしまっている。その作戦は、ナマコのような体質の「超・政党」の自民党にこそ有効に働くのであって、今ポジティブに動かなくてはならない弱体民主党が絶対に採ってはいけない作戦なのだ。


 話をポスターデザインに戻せば、浅野史郎のイメージ戦略は、「知性派」ではなく、「華奢だけどちゃんと立っていられる人」的なものにするべきだったと思う。あの人のキャラは、バリバリの官僚的知性派というよりは、プレッシャーをあまりプレッシャーと感じないでいられる、ちょっと抜けた感じがあるところだと思う。 だから、現職に対抗させるのであれば、「肉体派」に対しての「知性派」というストーリーではなく、「重量打線」に対する「バランス打線」的なイメージがいいのではないか。ちゃんと実績は有るわけだから、正攻法に「若く、爽やかで明るい」イメージを優先させればよかったのだ。【M】