● 「クライマックス・シリーズ!」

プロ野球セントラルリーグの、2007年シーズン実施要綱が公式HPで発表されている。 その中に、ファン向けの、「Q&Aコーナー」があるんだけど、読んでて面白いのは、今年から、どこのチームが優勝チームなのかが、よくわからないシステムになっているところだ。
例えば、【セ・リーグの順位決定方式は?】 という質問の答えは、【勝率により順位 を決定します。勝率第1位の球団を、年度優勝球団といたします】 と書かれている。 しかし、次の質問の、【クライマックス・シリーズとはどんな制度?】 という質問の答えは、 【レギュラー・シーズンの上位3球団で、日本シリーズ出場球団決定試合(クライマックス・シリーズ)を行います。第1、第2ステージに分けて行い、第2ステージの勝者が日本シリーズに出場します】 と、ある。 つまり、これまでどおり勝率が一位になって年度優勝しても、第二ステージで負ければ、日本シリーズには出られないということになるのだが、これまでのパ・リーグプレーオフと違うのは、それでもあくまでも、優勝チームは、クライマックス・シリーズという名のプレーオフとは無関係に、【シーズンでの勝率一位のチームとする】 というところだ。

この制度への批判は、以前このブログにも書かせてもらっているので繰り返さないが、逆にこの制度が面白いと思ったのは、実は日本人の心理の中には、『日本一!』 という称号に対する拘りとか、憧れとかがそれほど無いんだなということが解ることだ。 何故かというと、ここ数年、パ・リーグプレーオフが、何か盛り上がったような感じがしただけで、日本人の中に、「もうかるんだったら、一番強いわけではないチーム同士が日本一を競っても、それはそれでいいじゃないか」 という感性が働いてしまうということは、過去60年に亘って繰り広げられてきた、『日本シリーズ』 という物語が、壮大な、『茶番劇』 だったということを認めてしまうことになるわけで、それは同時に、かつて日本中が熱狂したと伝えられる、数々の名勝負を、「時代が変わった」 という日本人の独特のモダニティーによって、忘れてしまおうとしていることと等しいのだ。
 
 つまり、明治以来、日本の異常な高度成長を下支えしてきた、「それまでのプレ・モダンな慣習や、共同幻想を容易に捨て去ることができる」 という日本人独特のモダニティーが、つまり、目新しいものにすぐに乗り換えられるという、(ちょっとみっともない)感性が、このプロ野球の安易な制度変更の中にも見て取れるということだ。【M】