「中村紀洋」を見捨てる社会

育成選手、中村紀洋は、400万円の年棒のままドラゴンズの一軍選手として、ベンチに入ることになるのだろうか。背番号も200番台から一桁に変わり、一軍登録も? という報道までは聞いたが、改めて契約交渉が行われたという話は伝わってこない。オープン戦でもすでに2本のホームランを打っているようだが、中日球団はこのままほおっかむりを決め込むつもりか。


 百歩譲って、金銭的な折り合いがつかず、オリックスが契約を打ち切る、というところまでは解る。 しかしそのあとが問題だ。 中村に対し、選手としてもうこれ以上待てないというぎりぎりまで引き延ばして、育成選手入団テストなどという茶番までやったうえに、まるで助けてやったと言わんばかりの状況に追い込み、最低の年棒で契約し、いざオープン戦が始まると、ちゃっかり一軍登録をしてしまう。 こんなやり方って有りだろうか? 
 過去、中村はけがに泣いた去年以外は、多くのタイトルも獲得し、多くのファンを魅了したプロ野球会の逸材ではないか。しかも一球団のためだけではなく、日本代表としても活躍し、一時期は年棒5億を稼いだ選手であり、しかもまだ、松井やイチローとほぼ同世代の33才だ。
 マスコミやファンもそうだが、いったいプロ野球選手の労働組合は何をしているのだろう。 今、中村の置かれている状況は、所属球団に逆らったことに対する、明らかな制裁ではないか。 本来ならば、中村選手の実績に見合った新たな契約をするよう、球団やプロ野球機構に働きかけをしなければならないはずで、そうしなければ、どんなに頑張った選手でも、一年成績が悪ければ、400万円で働かせられるという前例ができてしまうのだぞ。 これだから、選手達は、狡猾なオーナー達になめられるのだ!。


 話は変わるが、選挙が近いから先送りされたようだが、世のサラリーマン達は、ごく近い将来、ホワイトカラーエグゼンプションをすんなりと受け入れるつもりなのだろうか。 日本では昔から、プロ野球は世相を、とくにサラリーマン社会の世相を反映しているといわれるが、中村紀洋に対する制裁に不正を見出せず、「しかたないか」と感じるような社会だとしたら、世の中はどんなに頑張っても、会社のためなら減棒もやむなしという「下流」思考に沈んでしまうのだろう。
 今日たまたま新宿紀伊国屋の前を通ったら、現代の子供達の「下流」思考について書いた本をコマーシャルする、大きな垂れ幕がかかっていたが、大人達だって充分「下流」に傾いているんだよ。【M】