「豚肉」スープ

朝日新聞の特集記事、「新右翼の欧州」 を読むと、なんとなく右寄りに社会心理がかたむいているのは日本だけではないことが分る。 以前、このブログに、「時代の気分」 という見出しでいくつかの投稿をしたが、欧州でもそのような社会の雰囲気というものが、少し前の例えば 「ネオナチ」 のように、あきらかなイデオロギー闘争ではなくて、なんとなく民族意識を持たないといけないような気分、そんな気分が、社会全体を覆っているような感じがするのだ。

 記事によると、パリの下町の駅にたむろするホームレスに、暖かいスープを毎週一回ふるまっている慈善団体があるのだが、それはキリスト教団体や、人権団体ではなく、右翼政党なのだそうだ。 この団体は、それだけではなく、国内の貧困家庭を支援したり、アフリカに衣料品を送ったりもしているらしい。 しかし、驚くことに、ホームレスにふるまうスープには、必ず豚肉を入れている。 つまり、イスラム教徒のホームレスはそれを口にすることができないのだ。

 この団体の代表の女性は、─「本当のフランス人のための炊き出しがどうしていけないの?これはフランスの価値を守る活動よ」─ と言っている。 しかしこの、矛盾の自覚のない彼女の心理をどう解釈するべきなのか。 彼女の言っていることは、必ずしも間違っているわけではないし、右翼政党の党利党略のためだけの発言とも思えない。 しかし、自分の行為や発言に対しては、確信を持って正しいと信じているようなのだ。

この「確信」は、以前このブログに書いた、日本の右翼青年達の確信によく似ているような気がする。 (http://d.hatena.ne.jp/ccg/20060822) 似ていると感じるのは、彼らの心理の中で、イメージや観念だけが肥大して、史実や、そこから感じられなければならないはずの 「矛盾」 が、そっくり棚上げされていることだ。 とにかく─迷い─がないのだ。【M】