部落解放同盟、帝国陸軍を脅す

■今朝の朝日新聞朝刊の三面記事、奈良市役所の職員が、5年間で8日間しか出勤していなかったのに、ほぼ満額の給与を得ていた! 当然、みのもんたの「朝ズバッ!」の格好の餌食になった。それによると、病気休職中のその役人は、実は別件で市役所に毎日のように出向いていたのだが、それはなんと自分の奥さんの所有する土建会社のために、せっせと公共工事の受注工作をしていたのというのだ。市役所の同僚職員も、上司もそのことはよく承知していたのだが、暗黙の内に見て見ぬふりをしていたらしい。どしてそうなってしまったのかというと、指に派手な指輪を付けてポルシェヴォクスターを乗り回すその男は、部落解放同盟の幹部の名刺をちらつかせ、か弱い役人を脅していたのだ。

しかし、部落問題をネタにか弱い役人に脅しをかけるというのは、今に始まったことではなかった。なんとなく、戦後の民主化と平行するようにそういうことが始まったかのようなイメージがあるが、なんと戦前の陸軍にも部落解放同盟は「脅し」をかけていたのだ。
松本清張著の『昭和史発掘』に「北原二等卒の直訴」という章がある。最下級陸軍二等卒にして部落解放運動活動家・北原泰作が、特別大演習のため行幸した天皇に、部落救済を直訴してしまったという事件なのだが、その、やっかい者、北原二等卒の軍隊内での─上官虐め─が凄い。もともとの原因は、別の連隊で起こった部落出身者への差別、虐待が大きな問題になり、軍の責任問題にまで発展したことだが、そのような軍の「弱み」を知っている北原は、そこに付けこんで、上官虐めを始めるのだ。上官の命令に従わないというのは日常的、無理強いしようとすれば逆に殴られる。ましてや部落差別的なことでも言おうものなら、吊し上げに遭わされるのだ。さらに、入隊したらだれでも強要される、天皇への忠誠の「宣誓」も拒み続け、ついに連隊長が頭を下げて「宣誓」をお願いするはめにまでなる。要するに、自分が移動するか、北原が移動するまで、黙って見て見ぬ振りをしていたかったわけで、泣く子も黙る帝国陸軍将校といえども、連隊内で問題を起こされて出世に響くことを心配する小心な役人でしかなかったのだ。【M】