『名前ランキング』

■9月27日の『わいがや2』、テーマは、─「子のつく名前の女の子は頭がいい」をめぐって─のための資料として準備した、明治安田生命名前ランキング2005』から。(ほとんど話題にしてもらえなかったのでこの場を借りて)


明治安田生命といえば、保険金不払いで有名になってしまったが、なぜか、インターネットで、『名前ランキング』 というのを発表している。 明治45年つまり大正元年から、平成17年まで、多く付けられた名前のベストテンが表になっていいるのだが、これがけっこう面白い。
 銘名の仕方からはどうしても、その時その時の─世相─を視たくなるのだが、まずはっきり言える事は、「男の名前はつまらない」 ということ。 時代を通して「正」とか「信」とか「清」とかいうような、高邁で表向きの名前が多く、世相をそれほど反映しているとは思えない。 せいぜいが、戦争中に、「勝」とか「勇」が目立つぐらいなのだ。 しかしそれに比べて、女子の名前は世相をかなり反映しているようで面白い。 
 
■一番解り易いのは、やはり戦争の時代に、「」や「」の字が多いことだが、「和子」は、昭和2年から、27年まで、2度トップの座をあけわたしただけで、ダントツに多い。 これは、例えばミッチーブームと呼ばれた頃に、「美智子」が、3回だけベストテンの中ほどに顔を出しただけであるのと比較すると、その多さがわかるだろう。 逆に、比較的平和で、文化的にも、豊かであった、大正時代は、「文子」「千代子」「久子」などが多く、特に「文子」は、大正年間を通して、5回トップを記録している。
 また、昭和30年代の高度成長の時代には、「恵子」「幸子」が多い。 やはり恵みや幸を期待する気持ちの現われだろうか。 しかしそれが、左翼運動などの社会運動が活発な、昭和40年頃になると、 「」「」「」というような、硬派な字を使うことが多くなり、長期間 「直美」 がトップの座をしめる。
 しかし、その後、昭和60年頃から、どんな名前が、どのような世相を反映しているのか、よく解らなくなる。 特出できるとしたら、昭和58年から、平成2年まで連続8年、ほぼバブルの時代を通して 「」 がトップの座を占めることだが、その理由は解らない。 ちなみにほぼその時期、男子の名前のトップが複数年に亘って 「大輔」 なのだが、相関性は不明だ。 平成年代は、文字の「表意」的な意味が重要性を失って、表音的な「イントネーション」 や「イメージ」 が先行するようになるのは、よく言われることだが、それも、『名前ランキング』 にはよく現れている。


■ついでに、何故、女の子の名前の方が世相を反映するのかということだが、やはり、親の心情としては、─「女」は時代に流されつつ生きざるを得ないものだから─という、差別的な心理があるからだろう。 男の子に対するように個の強さを期待するのではなく、─どうか、良い時代であってくれ─という親の「願い」が、世相を反映したものになるのだと思う。 そういう意味からすると、「期待」や 「願い」 よりは、「イメージ」 を優先する現代は、時代が安定していると感じているというよりは 逆に、時代や世相を「イメージ」することが難しくなっているということなのだろうか。【M】