Show the Flag!


ヨーロッパはかつて深い森に包まれていたらしい。 それを伐採して今の風景をつくったのは、キリスト教徒達だ。 掃討作戦というのは今も昔も変わらない。 森や洞窟に潜む異教徒達を掃討するには見通しを良くしなければならないのだ。 ベトナム戦争枯葉剤作戦も、アフガンやイラクの大規模な空爆も、あるいは広島、長崎も、彼らならではの発想だ。
 彼らには常に─「創世」という夢─がある。 帝国主義が興ったのも、民主社会が実現したのも、産業革命がいちはやくヨーロッパで興ったのも、「世を創る」という夢を持っていたからだ。 かつて、正しい者だけを「ノアの箱舟」に乗せ、その他の全てを掃討し、彼らだけの新しい大地を「創世」したところから、彼らのモダニズムの歴史は始まったのだ。

 しかし「創世」という使命は、彼らにとっては、「強迫観念」でもある。 少数民族でしかない白色人種達にとっては、社会は自分達の目指す方向に常に進歩していなくてはならず、それを妨げようとする者には徹底した掃討作戦で挑むのだ。

 重要なことは、彼らにとって「創世」は、いつの時点でも道半ばであるということだ。戦うことを強いられる彼らの夢の成就は、いつも先送りされる。 彼らにとってのアイディんティティーの危機は、「夢」が成就できないことではなく、それが成就してしまうことなのだ。 アルカイダのテロが実は、キリスト教徒達の「夢」を復活させてしまったことを知るべきだろう。 執拗なまでのイスラム教徒への攻撃は、単なる石油の利権の問題だけではない。 新しい世紀の始まりとともに、キリスト教徒にとっての、あるべき姿に世界を変えようという「新たな歴史」がスタートしたのだ。

 貿易センタービルの跡地に、さらに高い高層ビルを建てるというプランは、まさにそのことの象徴だと思う。 イスラムに対する、あるいは異教徒全てに対する、「宣戦布告」以外のなにものでもない。 (日本の建築家、安藤忠雄のプランが、慰霊のための小高い丘を造るというものだったこととは、隔絶の感があるではないか) 

 Show the Flag!]─【M】