想像の共同体

写真家川内倫子の写真集「花火」。 
 かつての共同幻想とは何かが変わった。今では、小さな集団が個人を拘束しまた他者と身内を差別化した、昔の頃の共同幻想ではない。それはグローバリズムという緩やかな共同幻想だ。

あらゆる物が「一点透視図法」によって明らかにされ、何も隠すことのできないパースペクティブのなかを、様々な新しい事件は、かなたの消失点に向かって、順次送り出されてゆく。 そこには他者の存在はなく、そこからはみ出るものもない。一瞬他者性を垣間見せた、イスラム原理主義者たちの行動も、すでに起こり得たものとして相対化され、同じように消失点に向かって、送り出されてゆく。

しかしその消失点がどこへ向かっているのかは分からない。 あるはずのない基準を維持するための手がかりは、「モダニズムという形式」だけだ。同じ方向を向くことを強いた共同幻想は今は無い。しかし皆が自分の意思によって向ける視線は、「奇妙な連帯感」という統制を受ける。しかしそれは抗うものではなく、みなが共有するものなのだ【M】