中田の涙

ブラジル戦に完敗したあと、中田はグランドの真ん中で仰向けに倒れたまま泣いていた。戦いに敗れて涙を流すという風景はありふれたものだが、この時の中田の涙は、そのようなありふれた涙ではなかったような気がする。スイスに敗れた韓国代表が流した涙はありふれたものだし、負傷退場したオーウェンの流した涙も同じものだ。
 悔し涙が、戦いを挑んだ相手に敗れた時に流すものであれば、中田は、何と戦っていたのか? 僕は、川渕三郎が言った、「日本のサッカーはワールドカップ優勝まで最低50年かかる」ということに対してだと思っている。この予選の戦いを通して、中田はそのことを認めざるを得なかったのだ。日本が、アグレッシブに戦えないことは、川渕同様、中田にも充分解っていた。しかし中田はそのことに挑戦したかったのだ。ー[M]